飛行場の安全と住民の生活の安心のために
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飛行場問題を考える市民の会事務局

 0424-85-6389

  松下 亘男

このブラウザではこの画像を表示できない可能性があります。 このブラウザではこの画像を表示できない可能性があります。 2010年

秋号

元死刑囚が、公然と遊覧飛行!

            官房長官、東京都、調布市は「遊覧」を否定 
 

 去る7月22日に、大韓航空機爆破事件のテロリスト、金賢姫元死刑囚が、調布飛行場から飛び立ったのは、新聞やテレビで大きく報道されたこともあり、ご存知の方も多いのではないだろうか。遊覧飛行は、覚書(東京都調布離着陸場の整備及び管理運営に関する覚書)で明確に禁止している行為である。早速、26日に都庁で、担当者に、経過や事実関係を問い質した。 

   遊覧禁止は事前に説明

 この件で、調布飛行場を担当している、港湾局離島港湾部の阿南課長は、金賢姫来日時の最高責任者である、中井拉致問題担当相に、調布飛行場から遊覧飛行はできないということを、事前に説明し、その上で、飛行場の使用を許可したとのことであった。あとは、国を信用するしかないと話していた。

このブラウザではこの画像を表示できない可能性があります。  なお、仙谷官房長官が、ヘリの使用について、「都心の交通の混雑を避けるためだ」と語っていた点についても、説明を受けた。 

   「東へ飛んだ」と調布市

このブラウザではこの画像を表示できない可能性があります。  一方、東京都との会合に先立って、調布市にも連絡し、対応の仕方について、尋ねておいた。調布市の担当からは、事前に、政府関係のヘリが飛ぶという連絡を受けていたこと、そして、遊覧飛行をするのではないかとの報道があったことから、飛行場管理事務所に事実確認をし、適切な対処の申し入れを、前日(裏面へ) 
 
 

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【前回までの要約】 

 調布飛行場に計器飛行を導入しようという計画があるが、それをやらないというのは、都営空港化の際の重要な約束事であった。計器飛行では悪天候でも飛ぶようになり、騒音・危険が激増するからである。一部で、「計器飛行は離島便に限定されるから、たいした変化はない」という説が流されているが、それは、決して事実ではない。昨年の猪瀬発言でも、新規路線に言及がある。むしろ、計器飛行が新規路線を呼び込む可能性がある。さらに、本当に離島便に限定されたとした場合にも、就航率の上昇に加えて、飛行ダイヤの増加、そして何よりも、飛行コースの設定による騒音の集中化で、生活環境に与える影響は計り知れない。

 昼間有視界飛行方式と飛行コースの分散化は、根幹の約束事であり、歴史的な経過を経て、定められた。 

 計器飛行に伴う弊害は、騒音の激増と危険の増幅である。前回まで、騒音問題を中心に述べてきたので、今回からは、危険の増幅について、記していきたい。これまでの記述と重複する部分もあるが、それを恐れず、丁寧に論じていくつもりである。 

   なぜ危険が増すのか(1)

 計器飛行という言葉から連想される、最大の誤解は、「安全性の向上」である。離着陸を、計器を使用して行えば、より安全性が高まるのではないかと思われがちであるが、そこが大きな落とし穴である。

 そもそも、機械化というものは、安全性の向上を目的に、実施されるというものではない。確かに、中には、安全性の向上を目的にした機械化もある。ATC(自動列車制御装置)や、最近話題になっている、車の追突を防止するための、自動停止装置などは、その好例であろう。しかし、そういったものは、あくまでも一部である。機械化の多くは、効率性を目的として行われる。より少ない費用で、より良いものを、より短い時間に、より多くのものをといったことが、基本である。それ自体は、本質的に悪いことというわけではないが、無茶な人員削減など、弊害を伴うこともある。

 では、計器飛行の目的とは、何であろうか。それは、東京都がはっきりと認めているように、「就航率の向上」にほかならない。

 就航率とは、予定機数に対する、運航機数の割合のことである。平たく言えば、飛ぶ予定だった飛行機が、実際に、どれだけ飛んだのかということである。就航率の向上とは、つまり、欠航を減らすということにほかならない。なお、ここで言う「欠航」とは、客が空港に来ている状態で、飛行機が出なくなることで、前もってお知らせして休む、「運休」とは別物である。

 では、欠航を減らすには、どうすれば良いのかということであるが、欠航の理由として、「機長の個人的事情」が意外と多いことが、ネット上で指摘されている。機長が寝坊したり、渋滞に巻き込まれたりして、空港に姿を見せないというわけである。羽田の幹線路線の場合は、予備の機長がいたりして、事なきを得たりするのであるが、地方路線の場合は、そうはいかないという。コスト削減の観点からすると、余計な乗員を常時待機させることはできないということらしい。結果として、欠航が生じてしまっているという話である。機長や航空会社に襟を正してもらい、こういった類いの欠航を減らして、就航率を高めてもらうということであれば、騒音の増加がある以上、歓迎はしないが、それはそれで、結構なことと言えよう。

 しかし、計器飛行ということになると、話は全く別である。「計器飛行を導入して就航率を高める」ということは、すなわち、「悪天候でも飛べるようにする」ということにほかならないからである。この点だけは、しっかりと押さえていただきたい。

 それに伴う危険とは、どういうものなのかについては、次回から、論じていく。(続く) 

元死刑囚が、公然と遊覧飛行!(表面から続く) 
 

(表面上部より)

までにしたこと、さらに、当日は、飛行場へ行き、報道されているように、富士山方面への遊覧飛行をするのかどうか、見ていたところ、ヘリコプターは、都心方面に、東の方向に飛び立つのを確認できたことなど、経過の説明が得られた。

 調布市としては、富士山の方向である西の方面ではなく、事前に、東京ヘリポートへ移動すると、東京都から説明を受けていたが、その通り、東の方面に飛び立ったことから、「遊覧飛行」とは受け止めていないが、東京都に、この飛行について、改めて説明を求めた、ということであった。 

   現時点での公式見解

 2010年10月現在の、この件に関する公式見解は、8月31日の、調布飛行場対策協議会に於ける、調布市の説明が、最新のものであろう。

 そこでは、「東京都が内閣の官房の方から説明を受けた内容が次の3点であります」として、①ヘリの遊覧飛行、観光目的ではなかったこと、②車両で異動した随行員を先にホテルに着けるために、上空で時間調整をした、③今回のヘリの移動は、都心の車両通行を行わないためであって観光目的ではない、との公式見解が示された。

 さらに、「次の3点を加えて申し入れをしました」として、①再三誤解を与える報道があったということは大変遺憾である、②遊覧飛行を認めるような政府側の発言や報道については、その都度東京都として事実確認をお願いしたい、③今後とも遊覧飛行の禁止は遵守していただき、あわせて誤解が生じることのないよう飛行場の適切な管理運営を改めて要請する、を挙げていた。 
 

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   苦しい説明

 一番大切な、再発防止の観点が押さえられているのは、良かったが、しかし、事実関係の説明としては、かなり苦しいものがあるだろう。

 第1は、飛行ルートの問題である。確かに、調布市の説明する通り、ヘリは、東の方面に飛び立ったかも知れない。しかし、その後、下の図にあるように、ヘリは、ルートを変え、横浜から富士山が見えそうな方面へ大回りした。曇っていた関係で、富士山は見えなったそうだが、少なくとも、これでは、「上空で時間調整」とは言えまい。

 第2に、金賢姫来日時の最高責任者である、中井拉致問題担当相自身が、「遊覧飛行」を認めてしまっているということがある。 

   放言する中井大臣

 7月23日の記者会見で、中井氏は、「可能なら、見せてやりたかったですよ。彼女、一生、外国へ出られないかもしれないでしょ?それは、分かります?こんなこと批判してるようじゃ、世界中、誰も情報持った人は、日本に来てくれません。」と開き直った。仮に、「一生、外国へ出られない」としても、それなりの理由があるということを忘れたかのような態度も問題だが、ともかく、遊覧を認めてしまっているのである。

 さらに、8月3日の予算委員会では、「ヘリコプター遊覧、別荘けしからぬとはおっしゃったけれども………。彼女を初め韓国側から、いろいろな条件、要求が出て、交渉に交渉を重ねました。私どもは、彼女を初め韓国側が、どこか一カ所でいいから観光旅行をさせてやってほしい、これは、彼女は永久にどこへも出られない、どこへも行けないということを考えると、私はある意味で、どこかでかなえてやりたいと考えて、軽井沢へ直行で行かせる、こういうことを考えました。………このヘリコプターに乗せて東京上空を飛べるかどうか、この安全についても最後まで韓国側と議論のあったところでございますが、私の責任において行ったところであります。」とも発言している。 

   激昂した韓国

 この発言には、韓国側も激昂した。多くの韓国人の犠牲者を出した事件の実行犯に、韓国政府がおもてなしするように要求したと言うのか。

このブラウザではこの画像を表示できない可能性があります。  中井大臣は、上記の発言の直後、「(大韓航空機事件は)許されざる事件であったことは言うまでもありません。しかし、今、李明博大統領は、あえてそういう中でも、日本への彼女の来日を許可していただいたわけであります。百十五人の被害者の大半は、ヒュンダイ建設の従業員でございます。当時、ヒュンダイ建設の社長は李明博さんでありまして………」とも述べている。

 ここまで分かっているなら、なぜ、相応しい行動がとれないのか。

 そして、さらに、翌8月4日の予算委員会で、中井大臣は、「韓国政府からは、くれぐれも穏便に、隠密に、派手にならないように………と強い要望がありましたが………」とも発言している。そして、その直後、「何とか東京上空を見せる、そのことによって日本を一度見たということにしていきたいと思ったまででございます」と来るのである。

 この大臣の迷走ぶりには、際立ったものがある。 

   要は中井氏の独断

 結局のところ、この遊覧飛行は、国内的にも国際的にも、実施できる環境ではなかったにも関わらず、金元死刑囚への情から、中井氏の独断でなされたというのが、真相であろう。この春、愛人スキャンダルを起こしたばかりの、中井氏ならではの暴挙とも言えよう。

 そして、周囲の人たちが、それが「誤審」と知りつつ、「遊覧ではなかった」と、「誤審であろうと、これが公式記録なのだ」と言わんばかりに叫んでいるというのも、もう1つの真実であろう。 

   金元死刑囚の受け止め

 一方、金元死刑囚自身は、この遊覧飛行をどう受け止めていたのであろうか。

 金氏が、8月22日に、産経新聞ソウル支社に出した手紙には、「軽井沢からヘリコプターで東京に移動する際………」と書かれている。調布飛行場を、軽井沢辺りと思っていたようで、従って、近距離を大回りして、露骨に遊覧したということには、気づいていない様子であった。ただ、批判は耳に入っていたようで、「日本政府がヘリコプター遊覧などあまりに私を厚遇しすぎではないか、という批判的な見方があったと聞いています。資格のない私への厚遇は心の負担になったし、本当に申し訳なく思っております」とも述べている。 

   デタラメな発表

 当会は、拉致問題を論じる団体ではないので、深入りするつもりはないが、これに関わるデタラメな発表については、一言指摘しておこう。

 金氏が事件を起こして、韓国当局の監視下に置かれたのが、1987年。それ以降の、北朝鮮の内部情報は、皆無と言っても、過言ではあるまい。中井氏は、7月27日の閣議後の記者会見で、金氏招聘の評価は、100点満点で「120点」と大見得を切ったが、情報のない人を呼んで、何の価値があろう。

 金氏自身は、先の手紙の中で、「期待に沿えるようなことをお話しできず申し訳ない思いでした」、「『北当局は死亡したというけれど、北のどこかで必ず生きています』と語り、皆さんに慰労と勇気を与えようと努めました。」、「一部で期待された“新しい情報”を提供できず失望させてしまったことは、心苦しい限りです」と、正直に心境を告白しているのである。