飛行場の安全と住民の生活の安心のために |
発 行
飛行場問題を考える市民の会事務局
0424-85-6389
松下
亘男 |
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2009年
1月号 |
9月の事故調査を、都庁で実施!
9月26日のオーバーラン事故を受け、当会では、11月26日に都庁で、港湾局離島港湾部の担当職員と会合をもち、独自の調査を行った。その結果、事故機に着陸許可を与えた際の手続きに、いろいろと問題のあったことが明らかとなった。
東京都も、手続きの不備は認識しており、すでに再発防止策を講じたとのことであった。
不明な飛来目的
そもそも、この飛行機はなぜやってきたのか、それが問題であった。調布飛行場は、市街地の中にあるということから、「不要不急の飛行は認めない」ということになっている。例えば、給油目的のみの飛行は認めないなどの約束がある。ところが、今回の場合、報道によると、ホンダエアポートから八尾空港へ行く途中に、調布に立ち寄ったとのことであった。
従って、事故直後から、飛来目的は何だったのかが、問題視されていた。
消しゴムで消した!
ところが、11月中旬に空港事務所で行った、事前調査で分かったことは、空港施設使用申請書の飛来目的のところに、「整備」を示す「3」という数字が、一旦書き込まれたあと、消しゴムで消されていたことであった。要するに、申請書を書いた段階では、このパイロットは、飛行目的をはっきりとは認識していなかったということである。
空港事務所の並木所長は、都庁での会合の席上、「整備」であったことを、公式に認めた。
不思議な「整備」!?
とても不思議なことがある。それは、この飛行機が、八尾空港へ、整備に行く途中に、調布に立ち寄ったということである。八尾で整備をするのなら、調布に、整備のために飛来する必要などないではないか。
所長の説明によると、パイロットは、八尾に行く前に、飛行機の基本性能、例えば、車輪がちゃんと出るか、などの確認をしたかったとのことであった。基本性能に不安のあるような、怪しげな飛行機で、この住宅密集地の中にある飛行場に来てもらっては、困るのである。
そして、こんな目的の飛来も、今の調布飛行場では、「整備」と扱われているようである。これも、困った実態である。
本物が………!!
消しゴムで消してあるような、いいかげんな申請書もいただけないが、そもそもの話として、この本物の申請書が、調布空港事務所にあったこと自体が問題である。これは、空港を使用しても良いかについて、事前に許可を求めるものである。従って、今回の場合であれば、パイロットは、ホンダエアポートを出発する前に、この文書を作成して、調布空港事務所にFAXで送付するなどして、着陸の許可を求め、それから、その許可を得てから、やってくるべきであったのである。着陸したあとで、着陸の許可を求めるなど、言語道断である。
当会世話人、9月の事故調査を、都庁で実施!
「突風」は認めず
ところで、肝心の事故原因であるが、これは、まだ調査中ということで、結局、分からずじまいであった。
新聞報道によると、北側から着陸を試みたところ、突風にあおられ、機体のバランスを失ったため、再浮上をしようとしたが、速度が上がらず、オーバーランして、草むらの中で停止したということであった。
ここで、我々がまず問題にしたのは、なぜ、「突風」が吹いたのかということであった。別の言い方をすれば、なぜ、突風が吹きかねないような気象状態であるにも関わらず、飛行場への着陸を認めたのか、ということである。
しかし、空港事務所の並木所長は、「突風」というのは、新聞が報道していることであって、東京都として承知していることではないという見解を示した。
「突風」なら問題
「突風」というと、読んで字のごとく、突然の風ということで、あたかも、「予期などできっこない」と言わんばかりの雰囲気があるが、そんな話を簡単に、容認などできようはずもない。少なくとも、2年前までは、気象庁の出先機関が、調布に常駐しており、飛行場周辺の気象を把握していたはずである。東京都は、管制業務を国から引き継ぐ際に、従来の安全性を確保するという約束をしたものである。
平成17年11月17日の、調布市議会調布飛行場等対策特別委員会において、参考人として招かれた、当時の東京都の担当課長は、「『国が東京都へのいわゆる管制業務廃止通知の中で、“現行実施している飛行場管制業務と同等に航空交通の安全性は確保できる”としている考えについて』でございます。
現在、調布飛行場と同種の飛行場でございます広島県が設置、管理する広島西飛行場でありましたり、岡山県が設置、管理する岡南飛行場などでは、設置管理者が航空機の運航に必要な情報の提供を行っております。これらの飛行場におきましては、航空管制官が配置されていないことによるふぐあいは発生しておらず、安全性は立証されているということでございます。
また、平成5年に国管理の第2種空港から県管理のコミューター空港に衣がえした広島西飛行場におきましては平成10年の年間着陸回数が1万
251回、平成15年の調布飛行場の着陸回数は 8,887回となっておりますが、これより交通量が多い時期から今日まで何ら特段の問題は発生していないとの運営実態を確認しているところでございます」と述べている。
大丈夫なの?
残念ながら、平成18年に、国は引き上げてしまい、管制官も気象庁の出先機関も、姿を消してしまった。同時に、飛行場そのものが姿を消していれば、誰も文句を言わないところであるが、飛行場だけは、危険な状態のまま放置された。少なくとも、飛行場周辺の住民には、そのように受け止められた。
しかし、東京都は、そういう立場に立たず、「国と同等に航空交通の安全性は確保できる」との見解を示した。であれば、それを、我々にも実感させてもらいたいものである。まさか、「航空機の離着陸に支障のあるような、強風を予測することができませんでした」などということには、なるわけがないだろう。
そういうことがあったのかどうかは、ともかくとして、東京都は、結局、突風を事故原因とは、認めることがなかった。
「再加速」の危険!
我々が、事故原因として、「突風」とともに問題としていたのが、「再加速」である。着陸しようとしたが、機体がバランスを崩したため、再浮上しようとして、加速したとのことであるが、この住宅密集地の中にある飛行場で、バランスを失った機体が、加速しようとしたというのだから、恐ろしい話である。速度が上がらなかったために、オーバーランしたというが、中途半端に速度が上がっていたとすると、いったい、どうなっていたというのか。
ただ、今回の会合では、空港事務所の並木所長は、この再加速についても、東京都としては確認していないという立場を示した。東京都と操縦士との間で、事故原因をめぐって、見解の相違があるのかもしれない。
いずれにしても、事故原因の究明には、国の正式な調査結果が待たれるところである。