飛行場の安全と住民の生活の安心のために |
発 行
飛行場問題を考える市民の会事務局
0424-85-6389
松下
亘男 |
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2009年
4月号 |
計器飛行問題で、調布市と協議!
計器飛行問題で、急展開があるかのような報道が、都政新報によってなされたのを受け、当会では、2月13日に調布市役所で、行政経営部政策企画課の担当職員と緊急の会合をもち、事実関係の確認を行った。その結果、少なくとも調布市には、そのような働きかけはないとの、明確な回答を得た。
この会合に先立って、東京都港湾局への調査も行ったが、都政新報からのこの件に関する取材は、1回もなかったとのことであった。現時点では、都政新報の記事は、勇み足とも見られるが、しかし、何らかの動きが水面下であったとも考えられ、その動きを注視していく必要がありそうである。
都政新報の記事内容
この都政新報の記事であるが、その内容を一言で言えば、(地元市にメリットのある)スポーツ施設の整備と、(地元市に迷惑な)計器飛行の導入は、バーター(交換条件)であるかのような雰囲気をにおわせた上で、スポーツ施設の問題が一段落した今、計器飛行の導入に向けて、急展開の見通しだということである。
その記述を、もう少し詳しく見ていこう。
この記事は、1月27日付の1面トップに掲載された。“武蔵野の森スポーツ施設”について「来月にも整備案を提示」というのが見出しで、一見すると、スポーツ施設の記事である。
ところが、「計器飛行も協議再開へ」との中見出しがあり、そこでは、「スポーツ施設整備は『調布飛行場の都営空港化の受け入れ条件』という市側の認識」、「都営コミューター空港化の提案と同時期に、都から跡地利用計画が示された。ところが、財政難の煽りで凍結。計画の中には下水処理場の整備も含まれ、市側には『約束をほごにされた』との思いがある」などと、「調布飛行場の都営化」と「スポーツ施設の整備」は交換条件との露骨な認識が示され、さらには、「都は、スポーツ施設の凍結解除を表明」、「同じく凍結していた『野川水再生センター』の整備案も提示」などと、あたかも条件が揃ったかのような記述のあと、「計器飛行についても、都と市側の協議が再開される見通しだ」、「都議選前の合意を目指す」と結ばれている。
離島で先行着手
冒頭で述べたように、都政新報の記事については、東京都も調布市も、明確に否定した。しかし、その一方で、計器飛行については、離島方面で、先行して設定される方向であることも、示された。
現在、国土交通省は、人工衛星を使ったMSAS(エムサス)という方式の計器飛行の導入を進めているが、東京都も、その方向で進めようとしている。MSASというのは、自動車のカーナビに極似したもので、機体に装備した機器に、位置情報を知らせるというものだ。手続き的には、飛行コースを設定し、国土交通省が告示し、それを機器に設定するということのようである。
当会世話人、計器飛行問題で、調布市と協議!
猪瀬発言の釈明なし
計器飛行の推進とともに、近年の東京都の代表的な問題行動であるのが、いわゆる“猪瀬発言”である。調布市は、かねてより、この発言について、説明を求めていたが、東京都港湾局は、このたび、それについて、「釈明できない」という最終回答を示してきたことが、明確となった。
いわゆる“猪瀬発言”というのは、昨年の4月1日に、調布飛行場を視察した猪瀬副知事が、「ビジネス使用すれば、新潟や韓国にも行ける。今どき、ジェットがダメなどはない。滑走路を1200mに延ばせば、56人乗りの………」などと、調布飛行場の拡大に言及したが、直接的には、その発言を指す。さらに、猪瀬副知事は、地元から厳しい批判が噴出したあと、それに対抗して、4月9日に、自身のブログで、「例えば、ボンバルディアQ300という機体は56人乗り。この大きさの飛行機を導入して、新潟や松本、福島、あるいは名古屋や大阪に飛ばすのはどうだろう。」などと述べているが、それらも含めて、“猪瀬発言”と呼ばれることもある。
この発言については、昨年6月の都議会でも問題となり、石原知事も、記者会見で「ただ、やっぱりね、行政に関しては、それまで行政の主体者と現地側とのいろいろ話し合いとか、そういう伏線がある訳ですからね。だから、あそこの調布の飛行場の件なんかもね、やっぱりそういうものをちょっと斟酌(しんしゃく)して発言されると、誤解を生じなくて済むんじゃないかってことは注意しました。注意というか、申しました。」と述べて、不適切な発言であったことを認めている。
なぜ釈明できぬのか
この暴言に対して、「釈明できない」というのが、今回の東京都港湾局の回答であった。調布市からも、この回答については、それ以上の説明がなかった。しかし、それでは、なぜ「釈明できない」という回答にしかならなかったのであろうか。
1つは、「弁解の余地のない」発言であったということであろう。猪瀬発言というのは、言うまでもなく、過去の大切な経過を、完全に無視したものであり、東京都と地元市との信頼関係を、根底から揺るがす事件であったと言っても、過言ではあるまい。従って、「釈明できない」のは、ある意味で「当然」と見ることもできよう。
しかし、もう1つの側面、すなわち、東京都港湾局が、この発言を明確に否定し、謝罪と反省の意を示したわけではなかったことについては、特に留意しておく必要があろう。それは、簡単に言えば、発言をした猪瀬副知事自身が、それを全然反省をしていないということにほかならない。現に、猪瀬氏は、昨年4月9日のブログを、撤回していないばかりか、都議会で問題にされたあと、問題にした都議の控室に、怒鳴り込みをかけたことが、報道されている。不適格であることが疑いない人物が、身分不相応な地位に収まって、不適切な態度をとり続けた結果、東京都港湾局が「釈明できなく」なってしまったという関係を、見落としてはならない。
石原知事が、猪瀬発言を不適切と認めたことから、表面的には、一件落着の感もないわけではないが、しかし、現実には、不発弾は存在し続けているのである。そういった事態を踏まえて、これからも、市民要求を強く高く、声にし続けていくことが大切である。
出席者の報告
飛行場問題を考える市民の会は2月13日、調布市政策企画課と折衝しました。議題は都から要求されている計器飛行方式の導入についてです。
都政問題を報道している都政新報(1月27日付)は、「計器飛行について、近く都と市側との協議が再開される見通し」と報じましたことから、その真意をただしました。市からは、「現在都との協議の日程は決まっていない。都政新報の一方的憶測の記事だろう」との回答がありました。
また、昨年暮れに東京都が調布市など地元3市に対し、調布飛行場から定期運航している新島空港と神津島空港にあたらしいタイプの計器飛行方式MSAS(エムサス)を導入し、航空機にも機器を装備する、と通知してきたことについて疑問点を質問しました。この計器飛行方式では、地上側に一切施設を設置しなくても人工衛星を使って計器飛行方式が可能になるとのこと、しかし、仕様には国土交通省の告示が必要です。都が語っていませんが、導入を狙っている調布飛行場の計器飛行方式はこの新しい方式になると予測されます。
調布飛行場は、「計器に頼らず、一定の視界がないと飛行できない」という、もっとも安全な方式をとるというのが協定の原則で、その逸脱は認めることはできません。